河川プリュームの循環構造と挙動



 貧酸素水塊(海水中の溶存酸素濃度DOが生物活動を阻害するほど著しく低下した水塊)は沿岸漁業に莫大な被害を及ぼしています。

 


 平水時、河川水は地球自転の影響を受けて(北半球で)岸を右に見て進む沿岸流として流れ去ります。洪水後に形成されるバルジは内部に栄養物質を滞留させるような循環構造を持ちます。



 洪水の約2週間後に河口の西部で貧酸素水塊が形成されています(観測:福岡県豊前海研究所)。

クラゲパッチのモニタリング
 
 現在研究中のテーマです。近年のクラゲ類の大量出現は海洋生態系に大きなインパクトを与えていると指摘されています。また、大量出現したクラゲはパッチと呼ばれる個体群集を形成し、定置網への入網による魚の鮮度低下、発電所冷却水の取水口閉塞などの問題を実際に引き起こしています。このパッチ形成は、繁殖や捕食回避などの生存戦略(能動的要因)によるものか、あるいは流れの収束(受動的要因)によるものか不明です。

 本研究では、海面に浮かべた49個のフロートを航空機から約1時間撮影し、49個のフロートで構成される49C3個の三角形の面積変化率から、表層水の水平発散量の分布を算出しました。その結果、算出した収束域にクラゲのパッチが形成されていることが分かりました。このことは、パッチ形成が水平方向に受動的であったことを示しています。航空撮影は、海面のクラゲパッチを短時間で総観的にモニターする有効な手段と言えるでしょう。近い将来、水中ビデオ撮影や陸上からの長期ビデオ撮影により、鉛直方向のパッチ形成やバイオマスの長期変動を調べたいと思っています。

References
1) Magome, S. and A. Isobe (2002): An analysis of the river plume behavior in Suo-Nada, based on the classification of salinity data by the history of river discharge, Engineering Science Reports, 24, 195-198 (in Japanese with English abstract).
2) Magome, S., A. Isobe and M. Kamizono (2002): The Response of the Oxygen-Deficient Water Mass to River Discharge in Suo-Nada, Bull. Coast. Oceanogr., 40, 59-70 (in Japanese with English abstract).
3) Magome,S and A.Isobe (2003): Current structure and behavior of the river plume in Suo-Nada, J. Oceanogr., 59, 833-843.

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