内部潮汐の反射・散乱

・内部潮汐は密度成層した海洋で、陸棚端や海山等の水深が急変する場所で、外部潮汐からエネルギーを受け発生する(例えば、Baines, 1982)。

・発生した内部潮汐は、発生域から比較的短い距離で減衰し、その際に、鉛直混合等にエネルギーが受け渡され、物質循環に寄与していると考えられている。

・内部波のエネルギーの減衰機構の一つとして、反射・散乱がある。これは、水深が急変する場所に内部波が入射した際に起こる現象で、内部波エネルギーの一部はスケールの小さな波に渡される。スケールの小さな波は発生域からすぐ減衰してしまうため、内部波エネルギーの減衰に寄与していると考えられている (Gilbert and Garrett, 1989; Muller and Xu, 1992)。






反射・散乱波発生の模式図  Baines(1971)

以前に行った研究
 内浦湾の海底地形図。等深線の単位はm。
・内浦湾は、駿河湾湾奥に位置し、湾口幅、奥行き共に約10kmの三角形型をした湾である。

・湾内は比較的平坦であるが、湾口や湾の南岸では水深が急変している。

・ 内浦湾では、密度成層の発達する夏季から秋季にかけ、顕著な内部潮汐が観測される。

・本研究では、内浦湾での内部潮汐の反射・散乱について調べた。

研究を進めた結果・・・



スケールの小さな波(鉛直スケール0〜29m)の運動エネルギーの水平分布図。
・スケールの小さな波は、湾内に集中しており、湾口と湾の南岸にエネルギーの極大が存在していた。

これらの極大は、内部潮汐の反射・散乱により生じることが明らかとなった。

さらに、内浦湾全体で、内部潮汐の全エネルギーの約20%が反射・散乱により、スケールの小さな波に輸送されることが明らかとなった。

現在の研究


 先に行った研究により、内浦湾では、多くの内部潮汐エネルギーが反射・散乱により、スケールの小さな波に輸送されることが明らかとなった。
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反射・散乱の一般的な評価をするためには、この研究を他の海域にも拡張する必要がある。

 そこで、現在は顕著な内部潮汐が観測される豊後水道で反射・散乱の研究を行っている。
 内浦湾は、駿河湾湾奥に位置することから閉鎖性が強く、静穏な海域であるが、豊後水道は、海流・潮流が非常に強い海域である。内部波は海流等の基本流によりその特性が大きく変化するため、内浦湾の研究とは異なる展開が期待できる。

最終的な目標: 沿岸域における内部潮汐の反射・散乱量を見積もる


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