2008年10月より、愛媛大学沿岸環境科学研究センター(CMES)に新しく誕生した研究室です。古海洋学・古陸水学を基盤に、気候変動や近年の人為撹乱が、海洋・湖沼生態系に及ぼしてきた影響を明らかにする研究を行っています。
『沿岸海洋・湖沼生態系は、気候変動や人為的撹乱に対して今後どのように変わっていくのでしょうか。』
数十年〜数千年スケールでの気候変動や近年の人間活動の高まりにより、海洋や湖沼の生態系の様相が様々な点で変容してきたと考えられています。長期的な生態系の変容過程とその駆動要因を的確に捉えることは、将来を展望し、生態系や水産資源を持続的に維持していくうえで不可欠です。しかし、定期的な観測は、20世紀後半以降に始まることが多く、こうした短期間の記録では長期スケールの生態系変動の実態やその変動メカニズムを把握することは困難であることが多いのが実情です。





私たちが研究の基盤としている「沿岸古海洋学」・「古陸水学」は、その扱える時間スケールから、十年〜数百年という時間スケールで変動する海洋・湖沼生態系や取り巻く環境の実態を把握することを可能にします。こうした学問は、数十年から数千年間の環境と生態系変化の歴史を紐解き、我々の生活に身近な今後100年の環境・生態系変動を予測するための科学情報を提供できると、私たちは考えています。これまで、沿岸海洋・湖沼を対象に、海底・湖底堆積物中の様々な生物・化学・物理情報の復元を試みてきました。例えばイワシ類の魚鱗や動物プランクトン遺骸、珪藻殻、藻類由来のカロテノイド色素は生物群集の指標として有効です。また、有孔虫殻のMg/Ca比・酸素同位体比は、水温や塩分の物理・化学指標となります。こうした古生物・古環境指標を用いて、観測以前の生物群集・物理環境の変容過程を明らかにし、その変動要因を解明するのが、我々の研究です(論文参照)。
現在私たちの研究室では、北海道大学・京都大学・産業技術総合研究所と共同で、世界で最も漁獲される、イワシ類資源量に見られる数十年〜百年スケール変動の機構解明に関する研究(科学研究費補助金:代表 加 三千宣、三井物産環境基金:代表 山本正伸(北海道大学大学院地球環境科学研究院))や、東北大学・岡山大学と共同で、湖沼生態系のレトロスペクティブ型モニタリング技術の開発に関する研究に取り組んでいます(地球環境研究総合推進費 研究代表:占部城太郎(東北大学大学院生命科学研究科))。





現在のフィールドは、瀬戸内海・北海道・東北沖の沿岸海洋から、北海道・東北地方の山岳湖沼までと幅広い水域を対象としています。
学生有志募集!
海洋・湖沼の調査を体験したい方、地球規模での環境変化、水域生態系の長期動態について興味のある学生や古海洋・古生物の研究者を志す修士・博士課程進学希望の方は、是非お問い合わせください。
海洋・湖沼生態系の長期変動の背後にある法則を紐解き、将来、私たちの地球環境や生態系がどのように変わりゆくのか、我々はどのように環境や生態系、水産資源を維持し、次の世代に残していくべきか、一緒に探求しましょう。